脱サラでラーメン屋を開業するとなぜ失敗すると言われるのか

「脱サラしてラーメン屋でもやるか…」そんな甘い夢、ドブに捨ててきな!
ああ、聞こえます。

 

「毎日上司にガミガミ言われる生活はもううんざりだ」
「俺はもっと自由に、好きなことをして生きていきたいんだ!」

 

なんていう、あなたの心の叫びが。そして、その「好きなこと」の選択肢に、なぜか多くの人が思い浮かべるのが「ラーメン屋」なんですよね。わかります、ラーメン、美味しいもんね。国民食だもんね。行列のできる店の前を通るたびに、「これ、俺がやったらもっと儲かるんじゃね?」なんて、一瞬でも考えたこと、あるでしょ?

 

ええ、いいでしょう。その夢、木っ端微塵に打ち砕いて差し上げます。この記事は、脱サラしてラーメン屋を開業しようかな、なんてフワフワしたことを考えているあなたのための、超・現実的なお話です。この記事を読み終える頃には、あなたは「やっぱサラリーマンが一番だわ…」と安堵のため息をつくか、あるいは「それでも、俺は地獄の釜の蓋を開けてやる!」と、本物の覚悟を決めるかの二択を迫られることになります。

 

準備不足と見通しの甘さで始めるラーメン屋は、100%失敗します。これは脅しでも何でもなく、ただの事実。あなたが思っている以上に、ラーメン屋の世界は甘くありません。むしろ、地獄です。この記事では、なぜ多くの脱サラ組が夢破れ、借金だけを抱えて閉店していくのか、その生々しい現実を、余すところなくお伝えしていきます。あなたに、無駄な失敗をしてほしくないだけなんです。

なぜ脱サラで始めたラーメン屋は9割潰れるのか

 

いきなり厳しい話をしますけど、いいですか?脱サラして始めたラーメン屋って、本当に、驚くほど潰れるんですよ。データで見ても、開業1年で3割以上、3年以内には7割が閉店に追い込まれるなんて言われています。いや、肌感覚で言わせてもらえれば、もっと多いんじゃないかな。9割は言い過ぎかもしれないけど、それくらいのインパクトで覚えておいてほしいんです。だって、他人事じゃないんですよ?これは、数年後のあなたの姿かもしれないんだから。

 

「俺は違う、俺は成功する側だ」って思いました?うん、みんなそう思うんです。開店セールの花輪の前で、満面の笑みで雑誌の取材とか受けてる店主たちも、みんなそう思ってたはず。

 

でも、その笑顔がいつまで続いたことやら…。なぜ、こんなにも多くの人が夢破れていくのか。それは、ラーメン屋というビジネスの「本当の姿」を知らないからです。憧れと現実のギャップ、そして「好き」という感情だけでは到底乗り越えられない、分厚くて高い壁があるんです。

幻想と現実のギャップという名の地獄の入り口

多くの人が抱くラーメン屋のイメージって、どんな感じですか?頑固だけど腕は確かな大将がいて、カウンター越しにお客さんと軽口を叩きながら、こだわりの一杯を提供する…。みたいな?ドラマや漫画の影響ですかね。うん、そういう側面もゼロじゃないのかもしれない。でも、それは全体のほんの1%にも満たない、キラキラした部分だけを切り取った幻想です。

 

現実はどうかって?まず、あなたは「店主」であると同時に、「経営者」であり、「経理」であり、「人事部長」であり、「広報担当」であり、「掃除のおばちゃん」でもあります。スープの仕込み?もちろんやります。麺の湯切り?当然です。でも、それだけじゃない。売上計算、原価管理、アルバイトのシフト作成、給与計算、SNSでの告知、チラシのポスティング、業者との交渉、クレーム対応、そしてトイレ掃除…。そう、トイレ掃除まで、全部あなたの仕事です。

 

「好きなラーメンを作って生きていきたい」…その夢は、膨大な量の「好きじゃないけど、やらなきゃいけないこと」の土砂に埋もれて、あっという間に見えなくなりますよ。本当に。カウンターの向こう側に見える華やかな世界と、厨房の裏で繰り広げられる泥臭い現実。このギャップに耐えられず、心が折れてしまう人が、まず最初の脱落者です。

「ラーメンが好き」だけでは絶対に越えられない壁

「とにかく俺はラーメンが好きなんだ!愛情さえあれば乗り越えられる!」…素晴らしい。その情熱は、確かに必要です。でもね、言わせてください。それ、何の役にも立ちません。え?言い過ぎ?いやいや、事実です。

 

考えてもみてくださいよ。日本にラーメン屋が何軒あると思ってるんですか?コンビニの数より多いんですよ。そして、その店主たちのほとんどが、「ラーメンが大好き」な人たちです。つまり、「ラーメン愛」なんて、スタートラインに立つための最低条件でしかない。アドバンテージでもなんでもないんです。みんな大好きなんですよ、ラーメンのこと。

 

あなたが寝ずに考え抜いた「究極の一杯」も、お客さんからすれば「数ある選択肢の一つ」でしかない。残酷だけど、これが真実です。「愛情を込めて作りました」なんてPOP、誰も見てません。お客さんが見ているのは、値段と、味と、店の清潔感、そして「この店を選ぶ理由」です。

 

その「理由」を、あなたはラーメン愛以外のロジックで説明できますか?「いや、俺のラーメンは本当に旨いから…」?ダメダメ、そんなのじゃ。みんなそう思ってますから。その自信、へし折られるのに3ヶ月もかかりませんよ。

開業資金という名の最初の関門、そして最後の砦

 

さあ、少し具体的な話をしましょうか。夢を語るだけならタダですけど、店を始めるには、嫌でも現実的な「カネ」の話がついて回ります。多くの人がここで最初のつまずきを見せる。いや、つまずくどころか、盛大に転んで再起不能になるケースだって少なくないんです。

 

「まあ、なんとかなるでしょ」「自己資金と、あとはちょっと借り入れすれば…」なんて甘い皮算用、してませんか?だとしたら、今すぐその計画書、破り捨ててください。ラーメン屋の開業資金は、あなたが思っているより、ずっと、ずーっと高くつきます。そして、その資金計画の甘さが、あなたの店の寿命を決定づけると言っても過言じゃありません。もうね、開店前から閉店へのカウントダウンが始まっちゃってる人もいるんですよ。信じられますか?

意外と知らない?恐怖の初期費用内訳

ラーメン屋を開業するのに、いくらかかると思います?500万?800万?甘い!都内でまともな店をやろうと思ったら、1000万や1500万は見ておかないと話になりません。「え、そんなに!?」って驚きました?じゃあ、その内訳をちょっと見てみましょうか。

 

まず、物件取得費。保証金(敷金)や礼金、仲介手数料ですね。これが家賃の半年分から1年分くらい、平気で飛んでいきます。次に、内外装工事費。スケルトン物件(何もないコンクリート打ちっぱなしの状態)からお店を作ろうものなら、数百万単位でかかります。厨房設備もタダじゃないですよ。ゆで麺機、コンロ、シンク、冷蔵庫、製氷機…。全部揃えたら、これまた数百万。[4] 中古で安く?ええ、いいでしょう。でも、すぐに壊れて修理費がかさんで、結局高くついたなんて話、腐るほどありますけどね。

 

食器、テーブル、椅子、券売機、看板…。ああ、もう、考えただけで頭が痛くなってきませんか?これら全部、あなたが汗水垂らして貯めた貯金と、これから何年もかけて返済していく借金で賄うんです。この時点で「あれ…?俺、何のために独立するんだっけ…?」って我に返る人もいます。でも、もう後には引けない。地獄の始まりです。

運転資金が尽きた時、それがあなたの店の命日です

はい、ここが最重要ポイントです。多くの人が見落とす、致命的な罠。それは「運転資金」です。店さえ開ければ、あとは売上でなんとかなるだろう、なんて考えていたら、即死しますよ。

 

店は、オープンしてすぐに満員御礼、毎日行列なんてことには、まずなりません。最初の数ヶ月は赤字覚悟です。というか、赤字です。断言します。その間の家賃、光熱費、人件費、そして食材の仕入れ代金…これ、どこから出すんですか?そう、これが運転資金です。

 

最低でも、月々の経費の半年分は、売上がゼロでも店を維持できるだけの現金を、手元に用意しておかなければいけません。これが尽きたら、どうなるか?どんなに美味しいラーメンが作れても、どんなに情熱があっても、家賃が払えなければ店は追い出されます。食材が買えなければ、ラーメンは作れません。ゲームオーバー。閉店です。

 

多くの人が、初期投資でカツカツになってしまって、この運転資金を軽視するんです。「すぐに黒字になるはずだ」という、何の根拠もない希望的観測にすがって。その結果、オープンからわずか数ヶ月で資金ショート。これが、ラーメン屋の廃業理由で最も多いパターンの一つです。あなたの店の命日は、運転資金の残高がゼロになった日。肝に銘じておいてください。

地獄の労働環境 それは奴隷契約ですか?

 

さて、お金の話でだいぶ気が滅入ったかもしれませんが、まだまだこれからですよ。次は「労働環境」の話です。「脱サラ」って言葉には、「自由な働き方」みたいな、ちょっとキラキラした響きがありますよね。満員電車からの解放、理不尽な上司からの解放、意味のない会議からの解放…。素晴らしい!でもね、ラーメン屋の店主になったあなたを待っているのは、サラリーマン時代が天国に思えるほどの、過酷な肉体労働です。マジで。

 

「自分の店なんだから、好きな時に休めばいいじゃん」って?ははは、面白い冗談ですね。休んだら、その分売上はゼロですよ。家賃は待ってくれないのに?従業員を雇えばいい?その人件費は誰が払うんですか?結局、自分が馬車馬のように働くしかないんです。これはもう、自分自身と結んだ「終身奴隷契約」みたいなもんですよ。

睡眠3時間?それが日常になる恐怖

ラーメン屋の店主の一日、想像できますか?朝、まだ誰も起きていないような薄暗い時間から、店の厨房に立ちます。スープの火入れ、チャーシューやメンマの仕込み、野菜のカット…。開店準備だけで、もうヘトヘトです。

 

そして、昼のピークタイム。嵐のような時間が過ぎ去り、息つく間もなく夜の営業準備。夜の部が終わり、お客さんが帰った後も、あなたの仕事は終わりません。片付け、掃除、翌日の仕込みの準備…。店の電気を消して、重い足取りで家に帰るのは、とっくに日付が変わった深夜。そこから売上計算や発注作業をして、数時間だけ泥のように眠り、また翌朝が来る。

 

睡眠時間?3時間取れれば良い方じゃないですかね。休日?月に2回あれば御の字。そんな生活が、365日、何年も続くんです。友達と飲みに行く?家族と旅行?そんな時間、どこにあるんですか?サラリーマン時代の「週休2日」や「有給休暇」が、どれだけ恵まれていたか、身をもって知ることになりますよ。いや、本当に。冗談じゃなく、体を壊して店を畳む人が後を絶たないんですから。

体を壊したら、はい、おしまい。代わりは誰もいない

この生活で一番怖いのは、体が資本だってことです。あなたが倒れたら、その瞬間に店の歴史は終わります。サラリーマンなら、病気で休んでも有給や傷病手当金があるでしょう。同僚が仕事のカバーをしてくれるかもしれない。でも、あなたは?個人事業主のあなたには、何の保証もありません。

 

一日休めば、一日の売上が消える。一週間入院しようものなら、その月の家賃の支払いに頭を抱えることになる。腰を痛めた?腱鞘炎になった?それでも、あなたは重い寸胴を持ち上げ、熱い湯切りを続けなければならないんです。誰も代わってくれないから。

 

「気合で乗り切る!」なんて精神論が通用するのは、若くて健康なうちだけ。何年も無理を重ねた体は、ある日突然、悲鳴を上げます。そして、ドクターストップがかかった時、あなたのラーメン屋人生も強制終了。残るのは、疲弊しきった体と、店の設備のローンだけ…。そんな悲しい結末、笑えないでしょう?これが、ラーメン屋店主のリアルなリスクなんです。

味と経営は別問題 天才料理人と赤字経営者は紙一重

 

さあ、ここまで読んで、まだ「俺なら大丈夫」って思ってる、そこのあなた。相当な自信家か、あるいはただの夢想家ですね。わかりますよ、きっとあなたは自分の作るラーメンの「味」に、絶対の自信を持っているんでしょう。「こんなに旨いラーメンなんだから、客が来ないはずがない!」って。
ええ、その自信は素晴らしい。旨いラーメンを作れることは、間違いなく大前提です。

 

でもね、ここで致命的な勘違いをしている人が多すぎる。それは、「旨いラーメンさえ作れれば、店は成功する」という幻想です。はっきり言います。味と経営は、全くの別物です。料理の天才が、経営の天才であるとは限らない。むしろ、こだわりが強すぎて経営を圧迫し、赤字を垂れ流す「芸術家タイプ」の店主が、いかに多いことか…。

旨いだけじゃ客は来ないという残酷な真実

想像してみてください。人里離れた山奥に、どんなグルメ評論家も唸るような、奇跡の一杯を出すラーメン屋があったとします。でも、その店の存在を誰も知らなかったら?お客さんは来ますか?来るわけないですよね。ビジネスの基本は、「知ってもらうこと」そして「来てもらうこと」です。

 

あなたの店は、オープンしただけでは「存在しない」のと同じです。無数にあるラーメン屋という大海の中に埋もれた、名もなき一滴。 ここから、どうやってお客さんに見つけてもらうんですか?「口コミで広がるはずだ」?そんなの、何年かかるかわからないし、そもそも最初の客が来なきゃ口コミも始まりません。

 

看板、チラシ、SNS、グルメサイト…。やれることは全部やらなきゃいけない。ラーメン作りで疲弊した体で、パソコンに向かって慣れないSNSを更新し、罵詈雑言が飛び交うレビューサイトの評価に一喜一憂するんです。

 

ラーメン作りの探求だけしていたい?そんなの、ただの趣味です。これはビジネスなんですから。「旨い」は当たり前。その上で、どうやってお客さんを呼び、リピーターになってもらうか。その戦略を描けない人は、どんなに旨いラーメンを作ろうと、閑古鳥が鳴く店でため息をつくことになります。

原価計算、できますか?ドンブリ勘定は破滅への最短ルート

はい、きました。多くの職人タイプの店主が苦手とする、数字の話です。「俺のラーメンは、最高の素材を使ってるんだ!採算度外視だ!」…かっこいい!実にロックだ!でも、そんな店は1ヶ月で潰れます。

 

ラーメン一杯の原価、ちゃんと計算できますか?スープに使う豚骨や鶏ガラ、香味野菜、煮干し。麺の小麦粉、かんすい。チャーシュー用の豚肉、醤油ダレの醤油やみりん。メンマ、ネギ、海苔…。これら全ての材料費を足して、一杯あたりの原価を算出する。そして、そこに家賃、光熱費、人件費といった固定費を上乗せして、初めて「売値」が決まるんです。

 

この計算を怠って、「まあ、大体こんなもんかな」で値段をつけている店が、本当に多い。[4] 素材にこだわりすぎて原価が跳ね上がり、売れば売るほど赤字になるなんていう、笑えない悲劇も起こります。「お客さんに喜んでもらいたいから」と、チャーシューを1枚サービス?その1枚の原価はいくらですか?そのサービスで、あなたの利益はいくら減るんですか?この問いに即答できないなら、あなたは経営者失格。ただの「いい人」です。そして、「いい人」は、ビジネスの世界では真っ先に淘汰されます。残念ながら。

 

まとめ それでもあなたは、ラーメン屋になりますか?

 

さて、ここまで散々、夢も希望もないような話ばかりしてきましたね。「脱サラしてラーメン屋なんて、やっぱりやめておこう…」そう思ったなら、この記事を書いた甲斐があったというものです。ええ、それが賢明な判断だと思いますよ。あなたの人生、大切にしてください。

 

資金計画の甘さ、地獄のような労働環境、そして「味」だけではどうにもならない経営の現実。これでもかというくらい、厳しい話をしました。なぜって、あなたに安易な道を選んで、取り返しのつかない失敗をしてほしくないからです。ラーメン屋の廃業は、ただ店を閉めるだけじゃありません。多くの場合、自己破産や離婚、心身の病気といった、人生を根底から揺るがすような悲劇を伴います。そこまでのリスクを背負う覚悟が、あなたにありますか?

 

それでも、万が一、億が一。この地獄の釜の蓋を開けるような話を聞いてもなお、「いや、俺はやる。絶対に成功させてみせる」と、心の炎が消えていない人がいるのなら。…まあ、止めはしません。ただ、覚悟を決めてください。あなたが足を踏み入れようとしているのは、生半可な「好き」という気持ちだけでは一瞬で燃え尽きてしまう、本物の戦場です。

 

サラリーマンという安定を捨て、退路を断って挑むからには、徹底的に準備をしてください。数年間は有名店で修行を積み、経営のノウハウを骨の髄まで盗む。事業計画書は、穴が空くほど見直し、最悪の事態を想定した資金計画を立てる。ライバル店を研究し尽くし、「あなたの店でなければならない理由」を100個言えるくらいにコンセプトを練り上げる。それくらいやって、ようやくスタートラインです。

 

最終的にどうするかは、あなた次第。ただ、これだけは覚えておいてください。ラーメン屋は、夢見る場所じゃない。夢を叶えるために、現実と戦い続ける場所なんです。健闘を祈ります。